視覚障害者のキャリアにもっと選択肢を──アクセシビリティテスターとしての挑戦

Webアクセシビリティ

はじめに

SmartHRというIT企業にアルバイトとして入社してから1年2ヶ月が経ち、2025年6月に正社員となりました。この記事では、アクセシビリティテスターとして働き始めたきっかけから正社員に至るまでの取り組みを書いています。アクセシビリティに関心のある方、そして視覚障害のキャリアに興味や不安のある方に読んでいただければ幸いです。

SmartHRとの出会い

SmartHRに出会ったのは、転職活動に必死に取り組んでいた時期でした。

適応障害で教職を退職後、以前から興味のあったWebコーディングを学ぶため、オンラインスクールに通い始めた頃です。

SmartHRを知り、Webサービスで困った経験を思い返したとき、前職で使っていた勤怠サービスのことを思い出しました。県が学校に導入していたそのサービスは、スクリーンリーダーでの操作性が低く、視覚障害のある教員は周囲の教員に代理で打刻や申請をしてもらわなければなりませんでした。

「やさしさで解決しないサービスを作る」というSmartHRのバリューに強く共感し、入社を決めました。

アルバイトとして入社した当初は、病み上がりだったため6時間勤務からスタートしましたが、半年ほど働くうちに自信を取り戻し、8時間勤務が可能になるまで回復しました。

アクセシビリティテスターの業務

アルバイト期間中は、必死にアクセシビリティの勉強を続けました。

フロントエンドの知識はオンラインスクールで学び、デザインからコーディングまで実践しながらスキルを磨きました。以下は初めて作成した架空のサイトです。

(※アクセシビリティの観点で至らない点が多く、現在も改善したいと思っています)

プライベートでも、アクセシビリティに関するオンラインイベントによく参加しました。

SmartHRには「アルバイトだからこれしかしてはいけない」という壁はありませんでした。ミーティングや勉強会にも、希望すれば可能な範囲で参加できますし、チームの成長のために意見を出すことも歓迎されます。

業務ではアクセシビリティ試験に加え、社内のアクセシビリティ研修も担当させてもらいました。また、ロービジョンとしての知見を社外へ公表することもありました。

ただし、アクセシビリティテスターは「障害があるからできる仕事」ではありません。

アクセシビリティの知識を身につけ、正確な試験を行うことが求められます。そのためには、自発的な学習と継続的な努力が不可欠だと考えています。

実は入社してからずっと続けている習慣があります。週に一度、パートナーと勉強の時間を設けることです。アクセシビリティやデザイン、Reactなど、さまざまなテーマを学んできました。今後も成長のために、継続的に学び続けたいと思います。

正社員として実現したい未来

やりたいことはたくさんありますが、まずはWCAG試験の実施と結果の公表、そしてユーザビリティチェックのチェックリストの作成を進めていきたいと考えています。

8月末には再び社外でのユーザビリティチェックを予定しています。

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SmartHRは変化と成長を楽しめる会社です。入社してからもメンバーをはじめ環境が常に変化し、挑戦と学びの機会に満ちています。

この場を借りて、これまでお世話になったすべての方に感謝申し上げます。

SmartHRの面接では、制作したサイトを紹介した際に「TRPGの大量のテキストログをまとめています」と伝えたところ、「TRPGね〜、知ってる」と返されて驚いたことを今でも覚えています。このやりとりがなければ入社を決めていなかった…というのは冗談ですが、本当にお世話になりました。これからももりもり成長を続けていきます。

さいごに

私の身の回りでは、視覚障害者の就職先としてあん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師(あはき)や教員が多く見られます。特にあはきは伝統的な職業ではありますが、「視覚障害者にも職業を選ぶ自由がある」ということを、私は強く伝えたいです。

私自身、かつては「視覚障害者だからあはき師や教員になるしかない」と思い込んでいました。前例が少ないから挑戦しづらい、一般企業に就職しても環境が原因で思うように働けない、そう考えていました。

しかし今は、転職をしてSmartHRという企業で、誰もがその人らしく働ける社会を目指し仕事をしています。

これからも、「誰もが使える」を当たり前にするために、挑戦を続けていきます。

そして、視覚障害のある子どもたちが将来の職業を考えるときに、さまざまな可能性を思い描ける世の中にしていきたいです。

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